こんにちは!ケイです。
今日はこんなあなたに向けて記事を書きたいと思います!
司法試験・予備試験の勉強は論文式が一番大事だと聞いたけど、どんなことを意識して勉強したらいいか分からないなあ。。色んな人が色んなこと言ってるし。。
最近は情報がたくさんあって何をどのようにすればいいのかという取捨選択が難しくなっていると思います。そこで、何回かに分けて司法試験、予備試験の論文の勉強法のコツや考え方をシェアしていきます。
どうぞ最後までお付き合いください!!
この記事で分かること
・論文式試験で求められる能力の要素が分かる。
・論文式試験で求められる能力を伸ばすための勉強方針が分かる。
論文式試験で必要な力と構成要素
早速結論ですが、僕は、論文式試験で必要な力は大別して2つであり、その構成要素として以下のような要素があると考えています。以下ではそれぞれの能力を高めるうえで必要となる考え方について説明をしていきます。
- 事案分析力(問題文から検討するべき法的問題を特定し、特定した法的問題の要件該当性に関係のある事実を問題文から抽出、意味づけする力)
- 条文や判例法理(代表的な学説)の理解(問題の所在、規範(重要な考慮要素)、理由付け)
- 各科目の固有の思考方法の習得(民法であれば請求権の選択方法、刑法であれば構成要件該当性、違法性、責任の順で検討する等)
- 論述力(事案分析の結果を答案上において表現する力)
(※次回以降に解説)- 論証の準備及び暗記
- 接続詞の固定化等の答案作成時間圧縮
- タイピングスピードの向上(PC試験)
- 事案分析の結果の重要性に軽重をつける能力
事案分析力について
条文・判例(代表的な学説)の理解について
理解・整理・記憶するべき項目
論文試験において、解答者は①論じるべき法律上の問題点を特定して、②特定した法律上の問題点についての要件を整理し、③与えられた事実関係からその要件を満たすのかを論じることが求められます。
やみくもに入門講座を聞いたり、問題集を解き続けても、上記の作業ができなければ一向に問題を解くことができるようにはなりません。
そこで、僕が受験指導で一貫して言い続けているのは、入門講座や問題演習(答案構成レベルでOK)をした際に、以下の3点をきちんと説明できるようになっているかを確認しようということです。
- 問題の所在(制度であれば具体的に制度を使うべき場面、論点であれば論点が問題になる理由)
- 規範(規範が抽象的な場合は重要な考慮要素も)
- 理由付け
問題の所在の整理のコツ
上記の「問題の所在」を正しく認識することは、本番において論じるべき問題点を正しく分析する上での大前提です。受験生を指導していると、8割くらいの人がここで躓いてしまっています。
少し具体例を出しますが、債権者代位権とはどんな制度かといわれて皆さんは即答できますか?
僕であれば、以下のように答えます。
・債権者代位権は債務者が無資力のときに債務者が持っている権利を代わりに使って、第三債務者(=債務者に対して債務を負っている債務者のことをいいます。)債務者の手元に財産を集めるための制度である。
・その他の例外として、例外的に債権者代位権以外に債権者の債権の実現のために適切な手段がない場合には、転用が認められている。その場合には無資力要件は不要になると解されている(いわゆる転用、民法423条の7参照)。
このように整理すると、債権者代位権を行使できないかを検討するべき場面は、債務者が無資力状態になっているときか、債権者の債権の実現のために債務者の権利を使う以外に方法がないときに転用という形で使うときの2つだということが分かります。
ここまで準備をしておけば、本番では問題文からそのような事情がうかがわれるときは、債権者代位権を検討すればよいことに気づくことができます。
僕の整理において「問題の所在を理解している」とは、どんなときにこの制度や論点が顕在化するのかを具体例で挙げたようなレベルまで整理ができることを意味します。入門講座や入門書において重要であるといわれた項目については、このレベルで問題の所在が説明できるようになることを目指しましょう。
なお、少し余談になりますが、予備試験のすべての重要事項について上記のレベルで問題の所在が整理できていなくても、おおむね受験生の過半数は書いてくる事項について上記の整理ができていれば合格レベルには到達するものと考えています。全部完璧にしなきゃ。。と絶望はしなくても大丈夫です。
規範と重要な考慮要素の整理のコツ
規範や重要な考慮要素を整理しておくことは問題文の事実を意味のある事実とない事実に分けるための前提であり、問題の所在と同じくらい重要度が高いです。
意識をしてほしいことは、規範の中核的な考え方を理解し、典型例をまずおさえてから、細かい要素を押さえるということです。
例えば、強盗罪の「暴行または脅迫」の程度として必要な「人の反抗を抑圧するに足りる」という要件についてみてみましょう。かかる要件は恐喝罪との区別をするための要件であり、恐喝罪については被害者からの交付行為を観念することができるのに対し、強盗罪においては交付行為は観念できません。
したがって、この要件を満たすかは、犯人の暴行や脅迫の程度が、犯人に抵抗することができない状態になっていて無理やり財物を奪い取られたと評価できる程度のものに至っているかどうかで判断されることになるでしょう。ここまでが、規範の中核的な考え方の理解に当たります。このように単に「人の反抗を抑圧するに足りる」というタームを単に覚えるだけではなく、何のための要件なのかを理解しておくことも重要です。
強盗罪の「脅迫」の典型例としては、ナイフのような殺傷能力の高い武器を使って、相手を脅す行為があります。これはナイフを突きつけられたら殺されたり、重大な危害を加えられるかもしれないと畏怖するのが当然であり、このような状況であればもはや通常人であれば犯人に抵抗できないのが通常な状況であるといえるからです。
では、以下のような事例であったら、どうでしょうか。
夜11時頃、街灯も少なく人通りも少ない道路で一人で歩いていた女性が、見知らぬ男にいきなり後ろから抱きつかれた。男は女性にの背中に金属製の何かを突きつけながら「財布を出せ、大声をあげたり、逃げようとしたらどうなるか分かるな?」と女性を脅したところ、畏怖した女性は自身の財布を男に対して差し出し、男はこれを奪って逃走した。後日、男が逮捕されて、警察が捜査をしたところ、男が突きつけたのは何ら殺傷能力のないスマホであり、スマホの角の部分を女性の背中に押し当てて武器を所持しているかのように装っていただけであることが判明した。
典型的な事例と違って、実際には殺傷能力が高い武器は使われていません。しかし、結論としては以下で指摘するような理由から反抗抑圧に足りる程度に至っているという認定がされることになるでしょう。
- 夜11時で人通りも少なく、助けを呼ぶことが難しい状況は犯人への抵抗をあきらめる要素であること
- 犯人が男性で女性に比して力があり抵抗が困難であることは犯人への抵抗をあきらめる要素であること
- 武器についても殺傷能力がないことが事後的に判明していても、いきなり背後から襲われて武器のようなものを押し当てられれば、殺傷能力が高い武器だと誤認して、犯人に抵抗する気力を喪失するのが通常であると考えられること
- 現に犯人が被害者に対して暗黙裡にいうことを聞かなければ危害を加える旨の害悪の告知をしていること
被害者が女性であることや、助けを呼びづらい状況であることは、反抗を抑圧する程度に至っているかを考える考慮要素になるということは予備校講義や基本書でも触れられている事実かと思います。しかし、これを機械的にやみくもに暗記をしようとするといずれ暗記量が膨大になりすぎてキャパを超えてしまいます。
一方で、犯人の暴行や脅迫の程度が、「犯人に抵抗することができない状態になっていて無理やり財物を奪い取られたと評価できる程度のものに至っているかどうかで判断される」大きな考え方を押さえた後であれば、そこから考慮要素を結び付ければよいので、理解も容易ですし、記憶の負担も軽減されます。
中核的な考え方を理解し、典型例を押さえる、そのあとに枝葉を足す形で記憶の負荷をかける。この順番を徹底するだけで、学習効率が大きく変わりますので、ぜひ意識をしてください。
理由付けの整理のコツ
理由付けについてはあまりいうことがないので簡単に言及するにとどめますが、実質的な理由付け(制度趣旨や利益考量から導かれる理由付け)と形式的な理由付け(条文の文言など)を分けて理解、記憶しておくことをお勧めします。
理由は、実質的な理由をしっかりと理解しておくことで、記憶に定着しやすくなるというインプット面での効果が期待できること、答案に理由付けを記載する際のメリハリがつけやすいことの2点です。
個人的な見解としては、理由付けの理解はあまり多くの時間を割きすぎることは得策ではなく、上記の問題の所在、規範(重要な考慮要素)の整理・理解・記憶になるだけ多くの時間を割くように意識をしてほしいなと考えています。
各科目固有の思考方法の習得について
論文の勉強の大半を占める要素についてはすでに説明をしましたが、論じるべき項目を特定する作業の文脈において、各科目固有の思考方法が必要になる場合があります。
憲法を例に説明すると、問題文の事実関係において問題になっている権利が憲法上の権利として保障されるといえるのか、制約されているといえるのか、制約の強度はどの程度といえるのかを認定し、審査密度を決定する(審査基準論)。具体的な審査基準論へのあてはめの仕方がこれに該当します。
このような科目固有の思考方法は、ある程度同じ科目の代表的な問題を何回も解いてしまって一気に身に着けてしまうのが一番早く、そして楽です。
そのため、入門講座や入門書でのインプットが1通り終了したら、予備校さんの指定している問題や合格者に何題か問題を選定してもらって問題を解いていきましょう。
身近に合格者がいなくて困ったな。。という方は『アガルートの司法試験・予備試験 実況論文講義』に掲載されている問題をまずは解いていきましょう!
まとめ
長くなってしまったので論述力については次回にしたいと思います。今日の記事のまとめを貼っておくので見直して皆さんの学習に役立ててくださいね!
- 論文の勉強の多くの時間は問題の所在、規範(重要な考慮要素)、理由付けを整理し、理解し、記憶するための時間にあてる
- 問題の所在を理解するとは、制度や、論点をいつ、どのような場面で使うのかを一言で説明できるようになること。
- 規範(需要な考慮要素)は、規範の中核的な考え方を理解し、典型例をまずおさえてから、細かい要素を押さえる意識をもつ
- 各科目の固有の思考方法を身に着けるためにインプットが終わったらすぐにその科目の問題を何問か解く
最後までお読みくださりありがとうございました!!
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