【有料級】予備試験憲法令和6年解説

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ケイ

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こんにちは!ケイです。

今日はこんなあなたに向けて記事を書きたいと思います!

あなた
あなた

予備試験の答えは出回っているけど、なんでその回答になっているのかいまいちよくわからん。

特に憲法は難しくて、、。丁寧めに解説してくれる人、、いないかな~~。

 分かります!!司法試験は「憲法ガール」という素晴らしい書籍があるのですが、予備試験だと充実した解説がないのが受験生時代の私の悩みでした。。。

そこで、今回は受験生の悩みにお答えするべく、直近の令和6年の予備試験の解説をしていきたいと思います!

判例の整理も踏まえて、1つの解答筋を示していきますのでぜひ参考にしてくださいね!

この記事で分かること
・予備試験合格者がどのように問題を分析するのかが分かる。
・令和6年の予備試験憲法の正解筋が分かる。

問題文の分析の思考フロー

設問と条件の確認

まず、設問と条件を確認します。設問1は、「祭事挙行費を町内会の予算から支出することの可否」、設問2は、「祭事挙行費を予算から支出し得るとして、町内会費8000円を一律に徴収することの可否」が問われており、A町内会の立場から検討するのではなく、あくまでも法律家として中立的な立場で意見を述べることが求められています

問題文の指示を無視した答案を書いてしまうと点数がつかないので、まずは設問と条件を正確に把握するようにしてくださいね。

誘導の確認と論点整理

憲法の問題は検討事項に明示的な誘導があるので、誘導項目を落とさないことが重要です。コツは、実際の生の声が記載されている箇所をマークしておいて、答案構成の際に検討項目として設けてしまうことです。

本問では、問題文の最後の段落にA町内会の会員の生の声が記載されているので、これをまず整理していきましょう。僕の場合は、以下のように整理しました(なぜこのように整理したのかは、各設問毎の解説において簡単に触れていくようにします。)

言い分(生の声)設問との対応関係検討事項
会員E:A町内会は任意の私的団体なのだから、私たちが決めたやり方でいいはずだ。設問1、設問2政教分離原則の適用の可否
A町内会の団体の性質の検討
(目的の範囲の広狭および構成員への協力義務の広狭を検討する前提)
会員F:祭事はA集落の重要な年中行事だ。集落を支えている町内会の会費から支出しなければ、集落に伝えられてきた伝統舞踊も続けられなくなる。設問1A町内会の目的の範囲の検討
会員G:私のような氏子にとって、祭事は信仰に基づく大切な宗教的活動だ。祭事ができなくなると私の信教の自由はどうなるのか。設問1A町内会の目的の範囲外と判断することの相当性
G:一括して一律に徴収するのが楽である。一人一人が都合を言い始めたら話が収まらない。設問2祭事挙行費分の会費納入義務を個別に免除することの可否

設問1について

政教分離原則の検討

皆さんもご存じのとおり、憲法は国家と私人との関係を規律する法なので、私人と私人の間においては憲法は直接適用されません。

そこでまず、A町内会の性質を検討し、政教分離原則の適用があるのかを検討します(Eの言い分には、「A町内会は任意の私的団体なのだから」という部分があるので、自分たちの組織は国家ではないという主張が含まれています。)。

A町内会の性質についてヒントがないかを探すと、資料の地方自治法260条の2第1項6号に、「地縁による団体を、公共団体その他の行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならない」とあります。 これをもとに素直に考えると、A町内会は公権力の主体である国や公共団体、またはその機関ではないので、政教分離原則は適用されないという結論になるでしょう。

(コメント)

政教分離の条文の選択ですが、金銭の支出を伴うので89条の指摘は必須です。「祭事の準備・執行・後始末などを担当しているのは、A町内会の会員である住民である。」という部分があり、実質的に祭事の運営主体はA町内会ではないかとも考えられるので、20条3項を答案で適示することも考えられると思います。

目的の範囲の検討

次に、祭事挙行費の支出がA町内会の目的の範囲内の行為であるのかを検討します。

目的の範囲の判断方法

この点については、南九州税理士会事件(最判平成8年3月19日民集第50巻3号615頁)、群馬司法書士会事件(最判平成14年4月25日集民第206号233頁)から考えることになるでしょう。

答案においては、①A町内会が実質的に強制加入団体と同視できるのか、②目的の範囲を厳格にみるのか、緩やかにみるのかという点について検討をすることが求められるでしょう。

判例の事案と本問の事案を比較すると、以下の表のような分析の結果になるでしょう。

 事情判断枠組み
南九州税理士会・目的の範囲外の行為が行われないように、監査権、決議の取消権、役員の解任権等がある。
・税理士会が強制加入団体である。
明示的に判断枠組みは示さず (目的の範囲の問題と協力義務の範囲を区別せずに判断)
群馬司法書士会特に判示なし(強制加入団体であることは同様)目的の達成に直接または間接的に必要であるかどうかで判断
(少なくとも、客観的・抽象的にみて判断するという記載はない。)
本問・任意団体ではあるが、加入率100%
・生活道路・下水道の清掃、ごみ収集所の管理、B市の「市報」等の配布など日常生活に不可欠な活動を行っている。
⇒ほぼ強制加入団体との評価が可能。
・設立のために市町村長の認可を受けることが必要で、目的も「地域的な共同活動を円滑に行う目的」に限定(地方自治法260条の2)
⇒広範な活動が行われることは想定されていない?
少なくとも八幡製鉄事件(昭和45年6月24日民集 第24巻6号625頁)によって示された判断枠組み(目的の達成のために直接または間接的に必要であればよく、その必要性の判断は客観的・抽象的に行われる)よりは厳格に判断?  

具体的検討

問題文によると、A町内会の目的は、「会員相互の親睦及び福祉の増進を図り、地域課題の解決等に取り組むことにより、地域的な共同生活に資すること」でした。

祭事挙行費の支出は神道に対する援助的な側面があり、一見してA町内会の目的にそぐわないように思われます。一方で、会員Fの言い分のように、祭事がA町内会の重要な年中行事であるという点を重視すれば、目的の範囲内の行為であるという評価も可能なように思われます。

あとはこの対立点を踏まえていずれの側面を重視した評価をするべきかについて、自分の見解を書けばよいということになります(神道の優遇になる側面が強いといえるのであれば、たとえ目的に適合している部分があっても、祭事挙行費の支出は目的の範囲外だと考えることになるでしょう)。

そして、いずれの側面を重視するかを検討にあたっては、政教分離原則のに関する判例を参考とすることができるでしょう。

総論 ~政教分離原則の判例の理解~

最近の判例は、一般人の目から見て特定の宗教に対して特別の便益を提供していると評価できるかを実質的な基準として政教分離原則違反の判断をしており、あくまでも各考慮要素を総合したうえでの一般人の評価を加えたうえで、比較的厳格に政教分離原則違反の判断を行っています(空知太神社事件(最判平成22年1月20日民集第64巻1号1頁)、孔子廟事件 (令和3年2月24日民集第75巻2号29頁)。すなわち、当該行為の目的や当該行為を行うに至った経緯が世俗的な理由であるという認定がされても、それは直ちに政教分離原則に違反しないという結論を導くものではないのです(空知太神社事件の多数意見を参照。)。

明示的な理由を判例は示していませんが、政教分離原則の趣旨は、国家の宗教的中立性を要請するものである以上、国家の行為の目的が宗教的な意図であってよいはずがないということなのでしょう(判例は、アメリカのレモン・テスト(①目的が世俗的か、②主要な効果が宗教を援助、抑圧するものではないか、③国家と宗教の関わり合いが過度になっていないかを独立して審査する手法)に影響を受けており、この名残であるという理解も可能です。)。

受験的には、国家が宗教とかかわりを持つことになった経緯や理由が世俗的な理由であるといえることは大前提であり、関わり合い方が適切なのかを検討するのが主戦場であること、そしてこの関わり合い方が適切なのかは一般人の目から見て判断されるのだということを理解してください。

目的効果基準で書くべきか、総合考量型で書くべきか

よく受験において目的効果基準と総合考慮基準とどちらで書くべきかが議論されますが、個人的な見解としてはこの議論に大きな意味はないと思っています。

目的効果基準を適用した場合でも、結論は「一般人の目から見て社会的儀礼の範囲内の行為か」により決せられており、一般人が問題となっている行為をどのように評価すると考えられるかを検討することになるのは目的効果基準をとろうが、総合考慮基準をとろうが同じだからです。

そのため、すべて総合考慮型一本で答案を作成し、判例学習を通じてその評価方法の習得に努める(レモン・テストも意識する。)のが政教分離原則との正しい向き合い方であると僕は考えています。

具体的検討

FやGの言い分を踏まえて、空知太神社事件の事案と対比する形で、本問の事案を分析すると以下の表のように分析ができ、これをもとに答案を作成していけばよいでしょう(あくまで一例であり、絶対的な正解ではありません。)。

空知太神社事件本問
当該宗教施設の性格・本件鳥居,地神宮,「神社」と表示された会館入口から祠に至る本件神社物件は,一体として神道の神社施設に当たる。
・本件神社において行われている諸行事は,地域の伝統的行事として親睦などの意義を有するとしても,神道の方式にのっとって行われているその態様にかんがみると,宗教的な意義の希薄な,単なる世俗的行事にすぎないということはできない。
・神社本体は焼失しているものの、ご神体は集会所に安置されている。
・年に2回神道の形式において神事が行われている。地域住民の交流や伝統の舞踊が行われていたり、地域住民としては地元の行事としてとらえていたとしても、宗教的意義の希薄な単なる世俗的行事に過ぎないということはできない?
当該行為の経緯・本件利用提供行為は,もともと
は小学校敷地の拡張に協力した用地提供者に報いるという世俗的,公共的な目的から始まったもので,本件神社を特別に保護,援助するという目的によるものではなかったことが認められる。
・何百年にもわたって集落の氏神をまつるC神社を中心に生活が営まれており、集落とC神社が一体化している。
・A町内会の多くの住民が宗教的行事ではなく、地元の行事として認識している。
⇒行為の目的自体は地元住民の親睦を深める、伝統舞踊の存続を図るなどの世俗的な目的で行われていたものと認められる?
当該行為の態様長期間にわたり継続的に便益を提供し続けている。A町内会費として1世帯当たり1000円の徴収が習慣化しており、長期間にわたり継続的に便益を提供し続けている。
これらに対する一般人の評価一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ない一般人の目から見て、町内会が特別の便益を提供していると評価せざるを得ない?
代替措置(Hの言い分)違憲状態の解消には,神社施設を撤去し土地を明け渡す以外にも適切な手段があり得るというべきである。例えば,戦前に国公有に帰した多くの社寺境内地について戦後に行われた処分等と同様に,本件土地1及び2の全部又は一部を譲与し,有償で譲渡し,又は適正な時価で貸し付ける等の方法によっても上記の違憲性を解消することができる。・祭事挙行費に支出される金銭は5万円(1世帯1000円×50戸)
・A町内会の住民の多くは祭事を重要な行事と認識
⇒任意に祭事挙行費を回収して、祭事を挙行することも不可能ではない。

(より上位の答案を目指す人へ)

上記解説は、判例になるだけ忠実に検討していった場合の解答筋の一例を示すものです。A町における生活とC神社が一体となっており、住民の親睦等の目的に合致すること、C神社がそれほど強い宗教性を持たないこと(祭事は2回だけで、普段はA町内会の役員が神社を管理していること)、祭事に対する住民の認識が宗教的な意義を持つものではないことを理由として、祭事の宗教性が希薄であると評価したうえで。目的の範囲内の行為であるという評価も可能であると思います(空知太神社事件の堀籠裁判官の反対意見を参照。)。興味がある方は、当たってみてください。

設問2について

設問については、群馬司法書士会事件を参考に、協力義務を課すことが公序良俗に違反し無効といえるような特段の事情の有無(民法90条)を検討することになります。

特段の事情の有無の検討にあたっては、協力義務を否定した南九州税理士会事件、協力義務を肯定した群馬司法書士会事件、本問の対比を行うことが有用でしょう。

この2つの判例を分析すると、強制加入団体においては、「様々な思想・信条および主義・主張を有するものが当然に予定されている」ことを理由に、構成員の思想・信条を害するような協力義務を課しているのかによって、特段の事情の有無の第1次的な判断をしていることが分かります(群馬司法書士会事件は、思想・信条を害しなくても過大な負担を課す協力義務を課すことにより、公序良俗違反になる余地を示唆している点も併せて押さえておくとよいでしょう。)。

考えられる分析としては、以下の表のとおりであり、Xに対して協力義務を課すことは難しいというのが判例から考えた場合の帰結かなと思います。

 南九州税理士会群馬司法書士会本問
協力義務の性質政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政 治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり(規正法三条等)、これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題本件負担金の徴収は,会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではない自分の信仰とは異なる宗教の祭事に対して自己の金銭が支払われる。 ⇒自己の信仰とは異なる行動を強制されるという意味で、Xの信教の自由(憲法20条1項)を害する?
金銭的負担の程度(金額は5000円だが、その負担の過多についての評価はされていない。)登記申請1件につき50円を,これを3年間の範囲で徴収するというものであって,会員に社会通念上過大な負担を課するものではない。毎年1000円の負担 (負担としては過大ではないという評価も可能か。)
協力義務の有無××(?)

まとめ

長い記事を最後までお読みいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただければなんとなくイメージがつくかと思いますが、憲法の問題は攻略するポイントは以下の2つです。

・誘導(「」の声は必ず拾う)やを丁寧に拾って、どのように処理をするかを構成上に落とし込む。

・重要判例の規範と考慮要素、考慮要素の評価の仕方を事前に確認し、ストックをしておく。

予備校の講義等でAランクの判例と言われていて、違憲審査基準であてはめがしにくい判例については大まかな規範とあてはめの仕方を確認しておくことが予備試験では大事になってきます。

判例学習のおすすめの本としては、「憲法判例の射程」があります。同書は重要な判例をコンパクトかつ簡潔にまとめてくれています。


まずは同書に書いてある判例の要旨を押さえる。

その次に、違憲審査基準では処理ができなそうな判例をピックアップして関係のある原文の部分を読んでみるという勉強法がおすすめです。

地味な作業ですが、1回やってしまうと憲法は大勝ちはできなくても大負けはしない実力をつけることができますから、ぜひ地道に取り組んでほしいです。

最後までお読みくださりありがとうございました!!

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